☆PWS plasma wave and sounder experiment

火星到着後、『のぞみ』からは長さ25mのワイヤが4本伸ばされ、先端から先端ま でが52mになる長大なアンテナとなります。このアンテナを使って、PWSとLF Aによるプラズマ波動の観測が行われます。 PWS(プラズマ波動及びサウンダー観測装置)は高い周波数帯 (28kHz〜4.8MHz)のプラズマ波動を観測し、太陽風と の相互作用の結果発生している火星周辺のプラズマ波動現象を調べ、その相互作用の メカニズムを研究します。また太陽や惑星から発射されている電波の様子もとらえま す。 さらにPWSは火星電離層の上方にある『のぞみ』探査機の軌道から周波数30kH z〜6.8MHzのパルス電波を送信し、 電離層で反射してかえってくる電波(エコー)をとらえます。 エコーの遅れ時間を調べることによって、火星電離層の遠隔探査を行うわけで、火星 電離層のプラズマ密度分布やダイナミクスを探ります。この観測は日本で独自に開発 ・確立された手法でプラズマサウンダーと呼ばれており、これまで多くのロケット実 験や、科学衛星観測で使われて来ました。『のぞみ』探査機では世界に先駆けて火星 でのプラズマサウンダー観測を行なうことになり、新たな成果が期待されます。 また、プラズマサウンダー観測より高い周波数のパルス電波を用いることで火星表面 から返ってくるエコーの観測が可能となります。このエコー観測により、『のぞみ』 探査機の火星表面からの高度計測や表面地形の観測が行われます。

PWSが高周波(20kHz-5MHz)の電波を利用して火星電離層や地表付近の観測をねらいとしているのに対 し、LFAは低周波(10Hz-32kHz)のプラズマ波動を観測して、火星磁気圏、電離圏上層を調べることを 目的としている。 プラズマ波動の観測は磁気圏各領域の構造や現象を理解する上で、欠かせないものである。太陽風 が惑星に吹きつけることによってできる bow shock と呼ばれる衝撃波の構造やその位置を調べる上 でも波動の情報が必要である。 また、火星電離層上部の夜側において、波動と粒子の相互作用で粒子が加速や熱化されるなどの現 象を調べることができる。