磁気圏尾部の磁気リコネクション

Geotail衛星による磁気圏尾部での探査は、サブストームの時に地球半径の20-30倍の距離の尾部で、磁気リコネクションにより、磁場として蓄えられたエネルギーが、プラズマの運動と熱エネルギーに変換されていることを確立した。衛星観測からのグローバルなオーロラとの比較の研究も進んでいる。そして、磁気圏尾部でどのようにエネルギーが輸送されるか、磁気リコネクションにより作られたプラズモイドがどのように発達するかなど、磁気圏尾部のダイナミクスを明らかにした。さらに、イオンと電子の運動の解析から、イオンの粒子的運動や、イオンと電子の独立な運動、ホール電流系という磁気リコネクションの重要な構成要素などを見つけ出した。

次のステップとして、磁気リコネクションの起きる条件は何か、磁気リコネクションの本質である磁場の拡散の機構は何か、いいかえれば、そこでの電場は何によって担われているか、このような物理過程を解明する必要がある。まず手がけるべきことは、拡張されたオームの法則の各項(ホール項、電子圧力項、電子慣性項、異常抵抗の項)を正確に評価し、どのような状況で何が物理過程を担っているかを突き詰め、その後、その運動論を解明すべきである。また、磁気リコネクションが起きるためには、磁気圏尾部の電流層が薄くなることが必要であり、その兆候はGeotail衛星でも捉えられている。それをさらに進め、電流層のどこがどのように薄くなるのか、プラズマの運動を規定する空間スケールに対して、電流層の厚さはどこまで薄くなるかなどを知る必要がある。

このような問題の解明には、Geotail衛星よりいっそう高い時間分解能をもつ高性能のプラズマ観測機器が必須であり、さらに、観測の行われている場所の、物理過程に対する相対位置を決定するために、プラズマの運動を規定する空間スケールに対応する多点での観測が必要となる。また、イオンや電子それ自体の運動だけでなく、どのようにそれらが場と相互作用を起こしているか、おそらく、変動する場としての波動の介在があり、粒子―波動の相互作用をきっちりと把握する必要がある。このことにより、イオンや電子がどのように有効に加速されているかが解明できるはずである。このように、SCOPEでは、電子の運動を分解できるまでの時間空間分解能を達成することにより、磁気リコネクションの物理を余すところなく解明すべきである。

 さらに、磁気リコネクションにより引き起こされる数々の物理過程も同時に理解していく必要がある。特に、磁気リコネクションより地球側でのダイナミックな変動の観測は、Geotail衛星では、軌道の制約などにより十分でなかった。SCOPEでは、地球近尾部でも観測が十分できるようにし、そこでの観測に適したように観測機器を設計製作しておく。さらに、磁気圏尾部での他の衛星や、磁力線でつながっている電離層レベルでの現象との同時観測は、有用であり、十分に連携のとれた観測ができる体制を確立しておく必要がある。特に、日本に近い経度領域では、オーロラ帯など高緯度が海となっていて、地上観測が手薄である。高緯度での地上観測ができる領域での観測を充実させるために、海外でのデータの取得方法を考える必要がある。