内部磁気圏での粒子加速

地球磁気圏のうち10地球半径よりも内側の内部磁気圏では、静止衛星も含めてこれまで数多くの観測が行われてきたが、実は、3次元粒子分布関数、磁場、電場の同時観測という、現代では必須の観測はこれまでほとんど行われていなかった。この領域での観測を複数衛星で長期的に行うことにより、内部磁気圏におけるエネルギー・物質の輸送過程が飛躍的に解明されることが期待される。この領域は、より外部でのダイナミクスの効果が流れ着く場所、磁気圏内のプラズマがもっとも高エネルギーになる領域であり、宇宙環境という応用を考えると、基本的理解を充実させなければいけない領域である。

 磁気嵐においては、内部磁気圏にリングカレントという高エネルギー粒子(10-100keV) による電流帯と、より高エネルギー(100keV以上)の粒子による放射線帯が形成されることが知られている。放射線帯粒子の生成過程に関しては、ULF/VLF波動によるその場における粒子加熱/加速という説と、拡散による外部磁気圏からの供給、という対立する2説がある。内部磁気圏で広いエネルギー範囲にわたる粒子の3次元分布関数と広い周波数帯域の波動を同時に観測する事により、これらの議論を定量的に解明することができる。また、大きな磁気嵐においては、水素イオンだけでなく電離層起源の酸素原子イオンがリングカレント粒子の大きな割合を占めることが最近の観測からわかってきている。広いエネルギー範囲にわたって酸素イオンの観測も行なうことにより、酸素イオンの加速の様相や、この存在によってリングカレントの生成機構がどのような影響を受けるか、について観測的な検証を行うことができる。

内部磁気圏における粒子加速問題として、磁気嵐時サブストームにおける broadband electrons と呼ばれる特異な電子の加速機構も挙げることができる。磁気嵐という特異な状況でのサブストームという突発的現象による領域間でのエネルギー輸送に伴って、未知の粒子加速・加熱過程が存在することを示唆するが、この謎にも迫ることが出来よう。