PLANET-Cニュース 2005

2005年のPLANET-Cニュースです。

2005年11月9日

Venus Express打ち上げ成功!

9日昼、欧州宇宙機関の金星探査機Venus Expressがカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。この探査機は我らがPLANET-Cとは違った方法で、やはり金星の大気や地表を調べます。Venus Expressチームと日本のPLANET-Cチームの間には交友関係があり、互いに切磋琢磨しながらここまで来ました。Venus Expressが来年4月に金星に無事到着し、そして多くの胸躍る発見をしてくれることを、心より祈ります。

(JAXA 今村剛)

2005年11月8日

VEXAG会合報告

将来の金星探査を検討するVenus Exploration and Analysis Group (VEXAG)の第1回会合が、NASAジェット推進研究所があるロサンゼルス郊外のパサデナ市において11月4日に開催されました。日本からも5人が参加して、日本のPLANET-Cの現状を報告するとともに、将来構想の議論に参加しました。米国が本気で金星探査に戻ってきたら競争が激しくなるなという印象です。議事メモはこちらから。

(熊本大学 佐藤毅彦)

2005年9月18日

金星探査検討グループ発足

将来の金星探査の検討グループVenus Exploration and Analysis Groupが米国を中心に立ち上げられました。ここには日本からもメンバーが参加しています。日本のPLAENET-Cや欧州のVenus Expressの後を、どのような探査計画が継ぐことになるのでしょうか?

2005年8月26日

大気超回転と火山の謎に挑む近赤外1μmカメラを開発中

新型遮光筒のテスト風景

長野県の臼田宇宙空間観測所の大暗室にて

金星探査機「PLANET-C」は、さまざまな波長域の光を5台のカメラでとらえることで、金星の大気の動きを詳しく観測します。そして、太陽系の気象学で最大の謎となっている「大気超回転」を解明しようとしています。「大気超回転」とは、金星の大気が金星の自転周期の約60倍もの速さで回っている現象です(自転周期243日に対し、大気は4日)。波長1ミクロン域の赤外線をとらえる「IR1カメラ」は、金星の昼と夜の両方を観測することで、その謎を解く手がかりを得ようとしています。

「IR1」は、昼には金星全面を覆う雲層(45-65km)からの太陽散乱光をとらえ、雲層下部での大気の動きを検出します。夜には雲層下部の観測に加え、地表の物質組成や活火山を調べようとしています。実は金星では、火山活動の跡があることは知られていますが、活火山はまだ見つかっていません。活火山を見つけられれば、金星の内部を知ることや、惑星の進化史のヒントを得られることになるため、観測チームは大きな期待を寄せています。

ところで、金星の夜側を観測する際には、強く輝く太陽は、視野の近くにあるため、観測をじゃましてしまうことになります。そこで、太陽の光をさえぎって観測データを守るための「遮光筒」が重要な役割を担うことになります。写真は角型や丸型の遮光板で構成された新型遮光筒のテスト風景です。

(東京大学 岩上直幹)

2005年4月13日

雷・大気光カメラの開発の現状

金星探査機「PLANET-C」には5つのカメラが搭載されますが、そのうちの1つが、 世界の惑星探査ミッションで初となる「雷・大気光カメラ」(LAC=Lightning and Airglow Camera)です。 このカメラは1秒間に5万回という「高速撮像」を行い、一瞬の雷光を確実に捉えます(肉眼で稲妻が見えるのは、残像現象によるものです)。

そして発光の有無をリアルタイムで判断する「自動イベント検出」の機能を有しています。 これは多くの撮像トライアルのうち、発光を捉えたものだけをデータとして残す、たいへんユニークで特徴的な機能です。

LACは厳しい重量制限をクリアするために2004年秋に設計変更を行い、70%以上(約5.2kg→約1.5kg)という大幅な軽量化を実現しました。 また撮像素子もMCP(マイクロ・チャネル・プレート)から、より信頼性・耐久性の高い固体素子のAPD(アバランシェ・フォト・ダイオード)への 変更を想定し、試作機による検証を続けています。

開発チームはLACが、20年以上にわたり続いてきた「金星における雷放電の存在」をめぐる論争に終止符を打つ決定的な証拠を、世界で初めてつかんでくれるものと期待をしています。

(東北大学 吉田純)

「雷・大気光カメラ」の概略図(2005年春・最新版)

1)設計変更前のLAC(左)

2)設計変更後のLACの外観(中央)と光学系(右上):太陽光や金星の雲の照り返しをさえぎるフードを持たないため、観測は探査機が金星の影に入る時間帯(金星の夜の側)のみを観測する。

3)受光面におけるフィルターの配置図(右下):検出器受光面を5分割し、特定の波長の光だけを透過するフィルターを5種類、撮像素子に直付けし、画素ごとに異なる観測対象を撮像させることにする。フィルターを回転させる機構などが不要となり、カメラの軽量化に大きく貢献した。

2005年4月8日

探査機に搭載する観測装置の開発は順調に進んでいます。今年度はいよいよ試作機がお目見えします。このような現状について、2月24・25日にJAXA宇宙科学研究本部で開催された第19回大気圏シンポジウムにおいて報告しました。抄録はこちら(PDFファイル)。