金星探査機「あかつき」

ミッションの歩み (打ち上げまで)

中村正人 (JAXA)

PLANET-Cミッション (Venus Climate Orbiter)は、全国の大学や各種研究機関の有志(工学メンバーを含む)で構成される金星探査計画ワーキンググループによって立案されました。 そして平成13年1月、宇宙科学研究所(当時)で開催された宇宙科学シンポジウムの席上で正式に提案されました。 提案されたミッションは金星へM-Vロケットを使って探査機を送り込み、 2010年12月から2年以上にわたって金星の周回軌道から金星大気の観測を行うというものです。 (2007年8月、打上げロケットはH-2Aに変更されました。)

提案を受けて宇宙科学研究所理学委員会では評価委員会を設置し、ヒアリングを含む審査を実施した結果、 2001年5月に宇宙科学研究所長に答申が出されました。ここでは、金星の大気科学をサイエンスの目標とすることは十分な意義のあることであり、 これによって金星の大気科学の進展が望めること、また搭載機器に十分な妥当性があり、実現の可能性が十分に吟味されていることが述べられました。 これにより、金星ミッションをM-V衛星計画として推進することが宇宙科学研究所の方針とされたのです。

さらに2001年7月には宇宙開発委員会に金星探査プロジェクト小委員会が設置され、 2回に渡って宇宙研外の有識者による審査が行われました。ここでは主にミッションの合理性、サイエンスの意義などが議論され、 高い評価を得て、速やかな計画の実行を推奨する報告が宇宙開発委員会開発評価部会に対してなされました。

これら一連の評価過程を経て、ミッションはPLANET-Cというコード名を宇宙科学研究所で与えられ、 2010年(予定)の打上げを目指して準備が進められています。 ちなみにPLANET-Cとは、ハレー彗星探査PLANET-A(1985年)と火星探査PLANET-B(1998年)に続く、日本で3番目の惑星探査という意味です。 ミッションは2002年度に基礎開発段階の位置づけがなされ、衛星の各サブシステム(推進系、通信系、姿勢系など)の基本設計の他、 科学観測機器の開発が本格的に始まりました。 2004年度からは試作モデルの開発を行い、2007年度には飛翔モデル(実機)の製作に入り ました。現在は打ち上げ前の最終組み立てと試験を行っています。科学観測機器の開発に は、宇宙科学研究本部の他に北海道大学、東北大学、立教大学、東京大学、大阪府立大学 などの大学等研究機関や多くのメーカーが参加しています。