衛星の構造

探査機の外観

衛星は2010年に打ち上げられ、同年に金星周回軌道に投入される。探査機総重量は約500kgで、この約半分は燃料および酸化剤である.搭載可能な観測機の総重量は35kg程度である。

金星周回軌道に投入された後は平均近金点高度300 km,遠金点高度13金星半径,軌道傾斜角172度,軌道周期約30地球時間をとる.軌道傾斜角が180度に近い値をとるということは,逆行軌道,つまり西向きの周回軌道に入るということであるが,これは西向きに循環している金星の大気の観測に最適化した結果である.この軌道上から最低2地球年(3金星年)の観測を行う.

衛星は3軸制御,つまり内蔵されたモーメンタムホイールに角運動量を貯めこむことによって衛星の姿勢擾乱を吸収し,姿勢を安定させる方式を取っている.これは衛星の側面に搭載されたカメラ群を,衛星そのものの姿勢を動かすことによって金星に正対させ,安定した状態で撮像を行う為である.衛星には固定された高利得アンテナが取り付けられ,これによって地球と4キロビット/秒 から 32キロビット/秒 の通信回線を確保するが,通常は衛星はカメラを金星に向ける姿勢を維持しており,地球との通信回線を開くときのみ衛星姿勢を変更して高利得アンテナを地球に向ける.衛星の南北面には太陽電池パドルが伸びている.このパドルは軸周りに回転し,衛星姿勢にかかわらず常に衛星に電力を与えられるように制御される.大事なのは衛星のカメラが南面に接して取り付けられていることである.この南面は太陽光が当たらない面として設計されていて,ここを宇宙空間に熱を捨てる放熱面とする.特に近赤外カメラ2は冷凍機を使って赤外検出素子を60-65Kに冷やすため,ここの面からの放熱が大切である.高利得アンテナの反対の面には、衛星を金星周回軌道に投入する際に用いる推力500ニュートンの2液式スラスターがそのノズルを突き出している.

金星周回軌道での観測計画

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